正文 第25节

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    言った。勉強もいちばんならスポーツもいちばんc人望もあって指導力もあってc親切で性格もさっぱりしているから男の子にも人気があってc先生にもかわいがられてc表彰状が百枚もあってという女の子だった。どの公立校にも一人くらいこういう女の子がいる。でも自分のお姉さんだから言うわけじゃないんだけれどcそういうことでスボイルされてcつんつんしたり鼻にかけたりするような人ではなかったしc派手に人目をつくのを好む人でもなかったcただ何をやらせても自然に一番になってしまうだけだったのだcと。

    「それで私c小さい頃から可愛い女の子になってやろうと決心したの」と直子はすすきの穂をくるくると回しながら言った。「だってそうでしょうcずっとまわりの人がお姉さんがいかに頭が良くてcスポーツができてc人望もあってなんて話してるの聞いて育ったんですもの。どう転んだってあの人には勝てないと思うわよ。それにまあ顔だけとれば私の方が少しきれいだったからc親の方も私は可愛く育てようと思ったみたいね。だからあんな学校に小学校からいれられちゃったのよ。ベルベットのワンピースとかフリルのついたブラウスとかエナメルの靴とかcピアノやバレエのレッスンとかね。でもおかげでお姉さんは私のことすごく可愛がってくれたわc可愛い小さな妹って風にね。こまごまとしたもの買ってプレゼントしてくれたしcいろんなところにつれていってくれたりc勉強みてくれたり。ボーイフレンドとデートするとき私も一緒につれてってくれたりもしたのよ。とても素敵なお姉さんだったわ。

    彼女がどうして自殺しちゃったのかc誰にもその理由はわからなかったの。キズキ君のときと同じようにね。全く同じなのよ。年も十七でcその直前まで自殺するような素振りはなくてc遺書もなくて――同じでしょう」

    「そうだね」と僕は言った。

    「みんなはあの子は頭が良すぎたんだとか本を読みすぎたんだとか言ってたわ。まあたしかに本はよく読んでいたわね。いっぱ本を持っててc私はお姉さんが死んだあとでずいぶんそれ読んだんだけどc哀しかったわ。書きこみしてあったりc押し花がはさんであったりcボーイフレンドの手紙がはさんであったり。そういうので私c何度も泣いたのよ」

    直子はしばらくまた黙ってすすきの穂をまわしていた。

    「大抵のことは自分一人で処理しちゃう人だったのよ。誰かに相談したりc助けを求めたりということはまずないの。べつにプライドが高くてというじゃないのよ。ただそうするのが当然だと思ってそうしていたのねcたぶん。そして両親もそれに馴れちゃっててcこの子は放っておいても大丈夫って思ってたのね。私はよくお姉さんに相談したしc彼女はとても親切にいろんなこと教えてくれるんだけどc自分は誰にも相談しないの。一人で片づけちゃうの。怒ることもないしc不機嫌になることもないの。本当よこれ。誇張じゃなくて。女の人ってcたとえば生理になったりするとムシャクシャして人にあたったりするでしょc多かれ少なかれ。そういうのもないの。彼女の場合は不機嫌になるかわりに沈みこんでしまうの。二ヶ月か三ヶ月に一度くらいそういうのが来てc二日くらいずっと自分の部屋に籠って寝てるの。学校も休んでc物も殆んど食べないで。部屋を暗くしてc何もしないでボオッとしてるの。でも不機嫌というじゃないのよ。私が学校から戻ると部屋に呼んでc隣りに座らせてc私のその日いちにちのことを聞くの。たいした話じゃないのよ。友だちと何をして遊んだとかc先生がこう言ったとかcテストの成績がどうだったとかcそんな話よ。そしてそういうのを熱心に聞いて感想を言ったりc忠告を与えたりしてくれるの。でも私がいなくなると――たとえばお友だちと遊ぶに行ったりcバレエのレッスンに出かけたりすると――また一人でボオッとしてるの。そして二日くらい経つとそれがバタッと自然になおって元気に学校に行くの。そういうのがcそうねえc四年くらいつづいたんじゃないかしら。はじめのうちは両親も気にしてお医者に相談していたらしいんだけれどcなにしろ二日たてばケロッとしちゃうわけでしょcだからまあ放っておけばそのうちなんとかなるだろうって思うようになったのね。頭の良いしっかりした子だしってね。

    でもお姉さんが死んだあとでc私c両親の話を立ち聞きしたことあるの。ずっと前に死んじゃった父の弟の話。その人もすごく頭がよかったんだけれどc十七から二十一まで四年間家の中に閉じこもってc結局ある日突然外に出てって電車にとびこんじゃったんだって。それでお父さんこういったのよ。やはり血筋なのかなあc俺の方のって」

    直子は話しながら無意識に指先ですすきの穂をほぐしc風にちらせていた。全部ほぐしてしまうとc彼女はそれをひもみたいにぐるぐると指に巻きつけた。

    「お姉さんが死んでるのを見つけたのは私なの」と直子はつづけた。「小学校六年生の秋よ。十一月。雨が降ってcどんより暗い一日だったわ。そのときお姉さんは高校三年生だったわ。私がピアノのレッスンから戻ってくると六時半でcお母さんが夕食の支度していてcもうごはんだからお姉さん呼んできてって言ったの。私は二階に上ってcお姉さんの部屋のドアをノックしてごはんよってどなったの。でもねc返事がなくてcしんとしてるの。寝ちゃったのかしらと思ってね。でもお姉さんは寝てなかったわ。窓辺に立ってc首を少しこう斜めに曲げてc外をじっと眺めていたの。まるで考えごとをしてるみたいに。部屋は暗くてc電灯もついてなくてc何もかもぼんやりとしか見えなかったのよ。私はねえ何してるのもうごはんよって声かけたの。でもそういってから彼女の背がいつもより高くなってることに気づいたの。それでcあれどうしたんだろうってちょっと不思議に思ったの。ハイヒールはいてるのかcそれとも何かの台の上に乗ってるのかしらってcそして近づいていって声をかけようとした時にはっと気がついたのよ。首の上にひもがついていることにね。天井のはりからまっすぐにひもが下っていて――それがねc本当にびっくりするくらいまっすぐなのよcまるで定規を使って空間にピッと線を引いたみたいに。お姉さんは白いブラウス着ていて――そうcちょうど今私が着てるようなシンプルなの――グレーのスカートはいてc足の先がバレエの爪立てみたいにキュッとのびていてc床と足の指先のあいだに二十センチくらいの何もない空間があいてたの。私cそういうのをこと細かに全部見ちゃったのよ。顔も。顔も見ちゃったの。見ないわけには行かなかったのよ。私すぐ下に行ってお母さんに知らせなくちゃc叫ばなくちゃと思ったわ。でも体の方が言うことをきかないのよ。私の意識とは別に勝手に体の方が動いちゃうのよ。私の意識は早く下にいかなきゃと思っているのにc体の方は勝手にお姉さんの体をひもから外そうとしているのよ。でももちろんそんなこと子供の力でできるわけないしc私そこで五c六分ぼおっとしていたと思うのc放心状態で。何が何やらわけがわからなくて。体の中の何かが死んでしまったみたいで。お母さんが何してるのよって見に来るまでcずっと私そこにいたのよcお姉さんと一緒に。その暗くて冷たいところに」

    直子は首を振った。

    「それから三日間c私はひとことも口がきけなかったの。ベッドの中で死んだみたいにc目だけ開けてじっとしていて。何がなんだか全然わからなくて」直子は僕の腕に身を寄せた。「手紙に書いたでしょ私はあなたが考えているよりずっと不完全な人間なんだって。あなたが思っているより私はずっと病んでいるしcその根はずっと深いのよ。だからもし先に行けるものならあなた一人で先に行っちゃってほしいの。私を待たないで。他の女の子と寝たいのなら寝て。私のことを考えて遠慮したりしないでcどんどん自分の好きなことをして。そうしないと私はあなたを道づれにしちゃうかもしれないしc私cたとえ何があってもそれだけはしたくないのよ。あなたの人生の邪魔をしたくないの。誰の人生の邪魔もしたくないの。さっきも言ったようにときどき会いに来てcそして私のことをいつまでも覚えていて。私が望むのはそれだけなのよ」

    「僕は望むのはそれだけじゃないよ」と僕は言った。

    「でも私とかかわりあうことであなたは自分の人生を無駄にしてるわよ」

    「僕は何も無駄になんかしてない」

    「だって私は永遠に回復しないかもしれないのよ。それでもあなたは私を待つの十年も二十年も私を待つことができるの」

    「君は怯えすぎてるんだ」と僕は言った。「暗闇やら辛い夢うやら死んだ人たちの力やらに。君がやらなくちゃいけないのはそれを忘れることだしcそれさえ忘れれば君はきっと回復するよ」

    「忘れることができればね」と直子は首を振りながら言った。

    「ここを出ることができたら一緒に暮らさないか」と僕は言った。「そうすれば君を暗闇やら夢やらから守ってあげることができるしcレイコさんがいなくてもつらくなったときに君を抱いてあげられる」

    直子は僕の腕にもっとぴったりと身を寄せた。そうすることができたら素敵でしょうね」と直子は言った。

    我々がコーヒーハウスに戻ったのは三時少し前だった。レイコさんは本を読みながらf送でブラームスの二番のピアノ協奏曲を聴いていた。見わたす限り人影のない草原の端っこでブラームスがかかっているというのもなかなか素敵なものだった。三楽章のチェロの出だしのメロディーを彼女は口笛でなぞっていた。

    「バックハウスとベーム」とレイコさんは言った。「昔はこのレコードをすれきれるくらい聴いたわ。本当にするきれっちゃたのよ。隅から隅まで聴いたの。なめつくすようにね」

    僕と直子は熱いコーヒーを注文した。

    「お話はできた」とレイコさんは直子に訊ねた。

    「ええcすごくたくさん」と直子は言った。

    「あとで詳しく教えてねc彼のがどんなだったか」

    「そんなこと何もしてないわよ」と直子が赤くなって言った。

    「本当に何もしてないの」とレイコさんは僕に訊いた。

    「してませんよ」

    「つまんないわねえ」とレイコさんはつまらなそうに言った。

    「そうですね」と僕はコーヒーをすすりながら言った。

    夕食の光景は昨日とだいたい同じだった。雰囲気も話し声も人々の顔つきも昨日そのままでcメニューだけが違っていた。昨日無重力状態での胃液の分泌について話していた白衣の男が僕ら三人のテーブルに加わってc脳の大きさとその能力の相関関係についてずっと話していた。僕らは大豆のハンバーグステーキというのを食べながらcビスマルクやナポレオンの脳の容量についての話を聞かされていた。彼は皿をわきに押しやってcメモ用紙にボールペンで脳の絵を描いてくれた。そして何度も「いやちょっと違うなcこれ」と言っては描きなおした。そして描き終わると大事そうにメモ用紙を白衣のポケットにしまいcボールペンを胸のポケットにさした。胸のポケットにはボールペンが三本と鉛と定規が入っていた。そして食べ終ると「ここの冬はいいですよ。この次は是非冬にいらっしゃい」と昨日と同じことを言って去っていた。

    「あの人は医者なんですかcそれとも患者さんですか」と僕はレイコさんに訊いてみた。

    「どっちだと思う」

    「どちらか全然見当がつかないですね。いずれにせよあまりまともには見えないけど」

    「お医者よ。宮田先生っていうの」と直子が言った。

    「でもあの人この近所じゃいちばん頭がおかしいわよ。賭けてもいいけど」とレイコさんが言った。

    「門番の大村さんだって相当狂ってるわよねえ」と直子が言った。

    「うんcあの人狂ってる」とレイコさんがブロッコリーをフォークでつきさしながら肯いた。

    「だって毎朝なんだかわけのわからないこと叫びながら無茶苦茶な体操してるもの。それから直子の入ってくる前に木下さんっていう経理の女の子がいてcこの人はノイローゼで自殺未遂したしc徳島っていう看護人は去年アルコール中毒がひどくなってやめさせられたし」

    「患者とスタッフを全部入れかえてもいいくらいですね」と僕は感心して言った。

    「まったくそのとおり」とレイコさんはフォークをひらひらと振りながら言った。「あなたもだんだん世の中のしくみがわかってきたみたいじゃない」

    「みたいですね」と僕は言った。

    「私たちがまとな点は」とレイコさんは言った。「自分たちがまともじゃないってかわっていることよね」

    部屋に戻って僕と直子は二人でトランプ遊びをしcそのあいだレイコさんはまたギターを抱えてバッハの練習をしていた。

    「明日は何時に帰るの」とレイコさんが手を休めて煙草に火をつけながら僕に訊いた。

    「朝食を食べたら出ます。九時すぎにバスが来るしcそれなら夕方のアルバイトをすっぽかさずにすむし」

    「残念ねえcもう少しゆっくりしていけばいいのに」

    「そんなことしてたらc僕もずっとここにいついちゃいそうですよ」と僕は笑って言った。

    「まcそうね」とレイコさんは言った。それから直子に「そうだc岡さんのところに行って葡萄もらってこなくっちゃ。すっかり忘れてた」と言った。

    「一緒に行きましょうか」と直子が言った。

    「なあcワタナベ君借りていっていいかしら」

    「いいわよ」

    「じゃcまた二人で夜の散歩に行きましょう」とレイコさんは僕の手をとって言った。「昨日はもう少しってとこまでだったからc今夜はきちんと最後までやっちゃいましょうね」

    「いいわよcどうぞお好きに」と直子はくすくす笑いながら言った。

    風が冷たかったのでレイコさんはシャツの上に淡いブルーのカーディガンを着て両手をズボンのポケットにつっこんでいた。彼女は歩きながら空を見上げc犬みたいにくんくんと匂いを嗅いだ。そして「雨の匂いがするわね」と言った。僕も同じように匂いを嗅いでみたが何の匂いもしなかった。空にはたしかに雲が多くなりc月もその背後に隠されてしまっていた。

    「ここに長くいると空気の匂いでだいたいの天気がわかるのよ」とレイコさんは言った。

    スタッフの住宅がある雑木林に入るとレイコさんはちょっと待っててくれと言って一人で一軒の家の前に行ってベルを押した。奥さんらしい女性が出てきてレイコさんと立ち話をしcクスクス笑いそれから中に入って今度は大きなビニール袋を持って出てきた。レイコさんは彼女にありがとうcおやすみなさいと言って僕の方に戻ってきた。

    「ほら葡萄もらってきたわよ」とレイコさんはビニール袋の中を見せてくれた。袋の中にはずいぶん沢山の葡萄の房が入っていた。

    「葡萄好き」

    「好きですよ」と僕は言った。

    彼女はいちばん上の一房をとって僕に手わたしてくれた。「それ洗ってあるから食べられるわよ」

    僕は歩きながら葡萄を食べc皮と種を地面に吹いて捨てた。瑞々しい味の葡萄だった。レイコさんも自分のぶんを食べた。

    「あそこの家の男の子にピアノをちょこちょこ教えてあげているの。そのお礼がわりにいろんなものくれるのよcあの人たち。このあいだのワインもそうだし。市内でちょっとした買物もしてきてもらえるしね」

    「昨日の話のつづきが聞きたいですね」と僕は言った。

    「いいわよ」とレイコさんは言った。「でも毎晩帰りが遅くなると直子が私た

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